板前

日本料理には板前の組織と意識によって独特の技術が伝えられています。

日本料理

日本料理(にほんりょうり) 日本料理とは、日本の風土で独特に発達した料理をいう。その材料、作り方、食べ方などは時代によって非常に異なる。食物に手を加えて食べやすくしたり、2種以上の食品を組み合わせることにより味をよくすることが広義にみて料理であるとするならば、料理の起源は石器時代、あるいはそれ以前までさかのぼるであろう。しかしこれらの時代は文献はなく、考古学の見地から遺物包含層、貝塚、化石などの発掘・調査により判断することになるので、ここでは文献のある時代から記することにする。

日本列島は季節風に恵まれ、春夏秋冬の別がはっきりしており、それぞれの産物が異なっている。また生物の種類が非常に多く、とくに魚類は、世界で生息する種類中、日本産の占める比率が著しく高い。鳥類はさほどではないが、獣類、植物類も面積のわりにその種類は多いほうである。したがってこれらの動植物で食用になるものを適宜組み合わせて、美味で栄養のある料理をバラエティー豊かにつくりだすことができたのである

まな板

まな板(まないた) 食物を切り裂くときに台とする、おもに木製の板。俎とも書く。元来、魚類(真魚(まな))を調理する板という意であり、同じ意の「俎」の字があてられ、俎、俎板、魚板などと記された。初めは脚がつけられていたようであり、室町時代末の『七十一番職人歌合(しちじゅういちばんしょくにんうたあわせ)』には、四つの独立した脚をもつまな板にのせられた魚を調理する料理人が描かれている。また、板面の四隅に上下に突出した脚をもち、両面をそれぞれ魚用と菜用に使い分けるものもあった。そして、室町時代に料理の流派が成立すると、まな板は、流派の別を表す格好の用具となり、たとえば、四条流では長さ2尺7寸5分(約83センチメートル)、大草流では3尺3寸5分(約102センチメートル)など、さまざまなサイズが伝えられた。材質はヒノキ、ホオノキ、カツラなどの厚板が使われることが多い。

板前

板前(いたまえ) 19世紀に多くなった料理屋の料理職人のこと。関西では板場(いたば)と称する。もともとは年季を積んだ料理場での差配役のことであった。15世紀に生まれた庖丁師(ほうちょうし)という魚鳥を料理する職人は宴会の席で客の前で料理する出職(でしょく)であり、なま物の料理法にいくつかの流派ができた。また、精進(しょうじん)物の料理職人の調菜(ちょうさい)は17世紀には刻肴師(きざみさかなし)となった。18世紀には庖丁師は刻肴師の技術を取り入れ、いっさいの料理の担い手となった。板前とは、まな板の前にいるからである。板前は自分で店を開くか、料理屋に雇われるか、とにかく居職(いじょく)となった。徒弟制による幾段かの技術階層、部屋制による職場の規制があった。刺身包丁一つに柳刃二つを紫縮緬(むらさきちりめん)の袱紗(ふくさ)に包み、他人のものは使わないというのが板前気質であった。近代でも、日本料理はこうした組織と意識によって技術が保持されていた。西洋料理の影響により、座業から立ち作業となった。現代では法律上、西洋料理職人(コック)とともに調理師となった。
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